仕上げ工事
2008年11月3日
もう11月に入り、今年も二ヶ月を残すのみとなりました。
工事完了時期は契約で10月いっぱいまでのお約束になっております。お施主様のご配慮で少し時期の猶予を頂きましたので助かりました。
本日も休日にも拘らず、塗装屋さんと樋工事の職人さんが現場で作業することになっておりましたので、朝一番から現場に詰めてそれぞれの職人さんとの打ち合わせを行いました。色の微妙なことなどは現場監督さんを介して行うより余程話がとおり易い。いや既に現場監督さんとは色の方針については話し合いをさせてもらっている。それを踏まえて更に微細なことを職人さんに伝えたかったのです。樋は縦樋及び横樋の微妙な取り付け位置をお話するだけで見栄えが違ってくる。
ここのところ、仕上げ工事が続いているので出来るだけ現場に張り付いていようと思いそのようにしている。職人さんにとっては邪魔な存在かも知れませんが工事の間違いを最小限にとどめられたり、判断もその場でできたりするので邪魔なだけではないだろうと思い現場に居座り、あちこち動き回り、ためつすがめつしている。
設計監理の経験を多く持ってはいても、現場はその都度に違ってくる。色の問題、仕上がりの程度と現場で判断することは非常に多い。或いは機能、メンテナンスなどの尺度との兼ね合いなど、現場で最後まで考えることが後悔をしない唯一の方法だろうと思う。
本日で内部工事は全て見えてきた。後は外構工事を残すのみである。
来週早々には外部の足場は外されるので、その部分の完了検査を行った。検査指摘箇所の修復を終えたら外部足場が外され、お色直しの披露となる。
木部の塗装
2008年11月9日
塗装は奥が深い。皆さんは家具・工芸の塗装と建築工事現場で行われる塗装とでは違うものであるということをご存知でしょうか。箪笥などの家具塗装は漆塗りを扱う「ぬしや」、漢字で書くと塗師屋という職業のカテゴリーであり、建築現場の塗装とは全くといってよいほど違います。漆器類でなくとも市販されている家具類のほとんどはその塗装を品質管理された工場で行われており、仕上がりが非常にきれいになっているのが一般的です。
塗装仕上がりの美しさを決定づけるのは塗装材料の品質よりも塗装工程の手間が大きく左右すると言っても過言ではないと思います。塗装表面の研磨、着色、研磨、中塗り、研磨、上塗りと最低でもこれらの工程を必要とします。建築現場ではこの工程を手仕事で行います。家具に施されている塗装仕上がりを目標として現場塗装条件下でそれに近づけようとするためには多くの工程と手間とが必要となります。コストもかかります。現実的には限界があると思います。
住宅に限らず建築を設計する場合は、常にコストを睨みながらその品質を決めていかなければなりません。高級感のある塗装が要求される場合は造りつけ家具であっても工場製作品にしておいて仕上がったものをビルトインする方法を採用する場合もあります。しかし通常の場合はそこまではしませんので塗装の品質はいつも悩まされるところです。そのような理由で自然材の選択をせずに塗装が不要な出来合いの樹脂製品についつい手が伸びてしまいがちです。
私の場合、クライアントの要望がない限り予算が少ない場合でも出来るだけ擬似木材の樹脂製品は使わないようにしております。その理由はなるべく自然の素材を感じる素材の方が人を包む環境に良いと考えるからです。小さな子供のいる家庭は特にいろいろな意味での蓄積が住環境から提供されるのではないかと考えています。コットンとか木材とかの肌触りの記憶は最初に食べた食物と同様に人の原風景となリ得るものと考えてるからです。
生目台の家の建具は全てシナ合板で作られております。この材料は質素で清潔な素材感を持っておりますので、出来ればその上に塗装などは施したくはありませんが、汚れ或いは経年変化などの理由で塗装を余儀なくされます。しかし例えば原材に透明クリアー塗装だけを施しても途端に飴色に変色しまい、安っぽくなり、原材の清楚なイメージは損なわれてしまいます。
そこで原材の表情が出来るだけ浮かび上がるために、表面を研磨した上で可能な限り薄く着色を施した上にウレタンクリアー塗りを行い、それを研磨し、更に仕上げとしてウレタンクリアー塗りをしました。塗装職人さんにそれらのことをお願いをして、一部始終現場に張り付いて行方を見守りました。お陰で出来栄えは上々で満足のいくものとなりました。欲を言えばもう少し原材のイメージが残るようにしたかった。それは可能と考えます。目標としている事を言い換えて説明するならば、塗装は施すけどその塗装の痕跡を隠し、原材の良さだけを引き出すということになります。
扉の他にもう一つ造り付けの家具の塗装があります。キャビネット及び靴箱です。その扉の表面にはウエルドパネルという予め自然素材を表面に貼り付けた製品が出ております。樹種はマツ。木目がしっかりと出ています。それを選びました。塗装もシナ合板と同様の目的で仕上げました。私自身は大変気に入っております。やさしさを感じます。
インテリアのテーマは一言で「無垢」でした。人が住み始めるといろいろな色と形で溢れます。そこでバックグラウンドは出来るだけ「無垢」にした上で、前述の素材感の出る扉、そして家具を含めた空間の有り様が出来るだけ主張せずに、尚且つ殺風景にならないように「清楚」と「やざしさ」を感じられるようにしたかった。インテリアだけの観点で切り取って言うと生活必需品を始め、オブジェ、絵画などの美術品などが置かれることで住み手の表情が出てくるようにするという意味では設計者に求められているものは花嫁の「白無垢の姿」までを用意するということなのかもしれません。少なくとも今回のように住み替えという条件ではバックグランドは主張しないほうが良いと考えて、木部の塗装を含めた全体のバランスを考えました。
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