いよいよ工事開始 - 生目台の家

解体工事
2008年6月7日
昨日、現場に行ってみた。大きなユンボが搬入されていた。まだ動いてはいない。来週の作業のための準備だ。

週明けから床堀に取り掛かる予定になっている。そして週後半からは基礎の配筋に作業が進む。鉄筋の加工にも着手しなければならない。それらの作業の前に基礎の施工図が出ていなければならない。先週金曜日に現場担当者に問い合わせを行ったところ、週始めには提出できるという。ぎりぎり間に合うが少し慌しい気がした。

工事をする上で施工図は非常に大事な役割をする。設計図は完成された結果を書き表しているのだが、それに対して施工図はその結果に辿り着くまでに伴う現場でのいろいろな問題をひとつずつクリアにしていかなければならない。それを怠るとトラブルにつながる。

いろいろな問題とは寸法上のことなどの物理的なこと、設備との取り合い、工程的なこと、品質上のこと、デザイン的なこと、また設計者と現場担当者との対象物への理解を確認しあうことなどの様々なことが現場でぶつかり合うことになるので、それらの問題を図面上で事前に解消しておく必要がある。施工図をチェックしている段階で変更が生じた場合でも、作業工程、又は準備に支障がないように時間的な余裕が必要になってくる。


終の棲家
2008年6月12日
クライアントのM様は一昨年に長年の会社勤めを終えられました。ご本人もこれからの頼みの収入は年金だけだと言って苦笑されておりました。

敢えて築20年の住宅を壊して、新たに新築しようとご決心をされたのは端的にいうと住宅に関して将来起こり得る出費リスクとその時に会計的に対処できるのかどうかをM様なりに考えぬいた上での結論でしょう。20年経過した住宅のこれからの10年、20年の経年変化の度合いは放物線を描くことでしょう。翻って考えてみればマンションでも設備配管などの寿命は20年を限度としています。そのためにマンション自治会ではやり替えのための積み立てをしているのが一般的です。同じく屋根材の寿命も15年が平均だと思います。住宅は20年を過ぎると経費を伴ういろんな問題が顕在化します。

また最近の傾向として台風が昔に比べてその威力を増しています。地球温暖化のせいでしょう。発生時期も早くなり、その数は減ってきているかも知れませんが個々の規模、主に最大風速が顕著に違ってきています。

M様の開口一番の基本的なご要求はこれらの条件に照らし合わせてRC(鉄筋コンクリート)造ということでした。次に夏涼しくて冬暖かで過ごし易い住宅を望むと。そして繰り返し申されましたのは将来的に出費が不要なこと。これが大事であると。

住宅の過ごしやすさの点で補足しますと現在の熊本の住宅は地理的な条件もあるのでしょうが、夏冬の条件が逆でその点でこれまで苦痛な生活環境を強いられてきたと困っておられました。

設計の面からはコストを含めた与条件を考えるとおよそハードルの高い条件であると言うのが私の第一印象でした。少し冒険的ではありましたが微力ながら私がどこまでお力添えできるかやって見たいと思いました。


地鎮祭
2008年6月14日
「雨降って地固まる」の慣用語とおりの天気でした。掘り返したばかりの土に雨は始末に悪い。幸い大降りにならなかったのと、現場スタッフの方々がテントを用意してくれたので助かりましたが、ご列席の皆様の靴はご想像のとおりでした。

現場で建物の主要な部分に沿って地縄を張ってもらいました。それに従い建物配置と高さをクライアントに説明をしながら私自身も図面に描いていたものを周辺状況と見比べながら再認識していました。
敷地の丁度真中に位置するところが2階部分の最高部高さとなり、周囲の隣地境界に向けて低くなっている。道路を歩く人々に圧迫感を与える心配もなさそうだし、全体が見渡せる。見通しが良いのは風通しが良いことにつながるでしょう。
建物の構成を簡単に説明しますと敷地の東と西側にそれぞれ4250×4250のコンクリート壁によるボックスを作り、そこをそれぞれの寝室とした。両者の間は6m隔たっていてLDKとなっている。東西端から中央に向けて屋根を掛けた。この部分は鉄骨で構成している。LDKの上は2階の部屋として利用できるまで屋根が上がっている。

ここまでがこの住宅の主要な骨組みである。あとは玄関、浴室、クローゼットなどの部分がアプローチ側に附設してある。全体をひとつにまとめなかったのは風通しを優先したためである。また構造上は足元を重くして、屋根を比較的に軽くしてあるので耐震強度は相当なものになるだろうと期待している。


いよいよ工事開始
2008年6月15日
一昨日までは騒々しくしていた解体のためのダンプカーは昨日になると急に静かになった。20年前に建てられた木造二階建ての家屋はその姿を跡形もなく消し去られた。残ったのは庭の樹木のみとなった。20年の歳月を生き抜いた家屋はオーナーのためにその役目を充分果たしたことだろう。建築としてその役目を終えるのは短かったのかも知れない。しかしオーナーの今後の人生を包むシェルターとしては機能不全であることが、今回取り壊しの最大の理由となった。

宮崎市は東に日向灘、西側に山地が連なり、その間に広がる平野の中に街が形成されている南北に長い地形である。従って陸風と海風は東西方向となる。敷地は中心市街地の平野から少しずつ地形的にレベルアップした丘陵地のピークを僅かに東側(海側)に降りた所に位置する。この周辺一帯はおよそ20年前に公共的な開発活動を背景にしてベッドタウンとして丘陵地を区画整理したものだ。現在は町並みもすっかり落ち着いてきて住環境として最高な条件を備えている住宅地と言っていいでしょう。設計者の私自身もこの地域に住んでおり、散歩をしながら気持ちを落ち着けることのできるコースになっている。

クライアントのM様は20年前にご家族のためにこの地に住宅をお建てになりましたが、完成後は落ち着く時間も与えられずに、九州一円を仕事のために奔走することになった。しばらくして仕事上の都合とはいえ、九州の地形的中心部である熊本市に新たに拠点を構えることを余儀なくされた。そんな事情で宮崎のこの家は真のオーナーに貢献できたのは僅かな時間であった。役目の大半は貸家となり、一昨日まで続いたというわけです。

次回はM様が宮崎にお戻りになり、この地で新たに住宅をお建てになりたいという思い入れなどに触れてみたいと思います。


基礎工事前打合せ 
2008年6月18日
先週末から降り」続いた雨は火曜日に漸く止んだ。
その分、土の掘削も遅れたことになるが、そういうことも考慮しての全体的な工期を設定してある。

今日は施工会社の担当者ともう一人のサポーターの人に事務所にご足労願い基礎関係の打合せを行った。床堀と基礎フーチン及び地中梁の設計の考え方を現場でどのような方法で施工計画をしていくのかをお互いに確認しあった。その中で現場から出てきた2.3の要望は構造設計上の問題が孕んでいたので、そのことについて構造設計者に意見を求めることにした。

その要望はどちらかというと構造上安全側に働くことであったので、幸い聞き入れる事ができた。しかし注意しなければならないのは最近の構造の考え方では部分的に安全側であっても全体から見ると疑問が生じるということが起こり得るので、その都度に構造設計者の意見を求める方が無難だ。(端的に言うと応力のねじれの問題又は一極集中)

半分くらい掘り返した土も明日のお昼過ぎには終えることができるだろうと報告を受けているので私はその時に床掘りを見に行こうと思っている。敷地西側はGL-1000くらいで強い岩盤が出ているとのこと。


床掘り
2008年6月19日
午前中に現場から床堀り終了の連絡を受けました。レベルはGL-1200です
。西側は岩が出て、掘削に時間を要したが東側は岩は見られなかった。東西で地盤強度にバラツキがあるのは地盤調査の段階で予測はできていた。もちろん支持地盤を柔らかい方で設計してある。

南西角部は盛土らしき土の色変化が見られたとの報告を受けた。その部分に計画建物の隅角部の一部が重なることになる。検討した結果を下記します。

1.盛土は通常13年程経過すると強度的に周囲と同化し、落ち着くという地盤調査会社からの報告を受けている。当件は20年経過している。

2.建物がそこに重なる部分が隅角部の一部である。

3.べた基礎で設計してある。

4.地盤調査ポイント4箇所のうち、一番弱いデータが出たのがここに近いポイントである。設計はこのポイントのデータで支持地盤を設定している。

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